うろうろと落ち着かない様子のAさん。そのうちズボンの前が濡れてしまいました。
「どうしました?」と聞くと「いやあ手を洗っていたら濡れたんですよ」といわれます。でもどう見てもおしっこのよう…。
そのときあなたはどうしますか?
しまった!と思い、ついこのように答えておられるかもしれません。
軽度認知症の方なら余計にこう注意されることで「嘘じゃない!」と興奮されることもあります。
また本当に水で濡れたと思っている方には効果はなく逆に異常な行動が現れる場合があります。
放っておくと衛生上良くないのはもちろんのこと、不快な状況が続きますます落ち着きをなくされることがあります。
認知症の方は介護者の態度にとても敏感です。笑顔を絶やさないことはとても大切です。
尿失禁には色々な原因があるため、まずはそれを知る必要があります。アルツハイマー認知症の場合十度になるまで比較的尿意、便意はたもたれるため、時間ごとやサインを見逃さずトイレに誘うことはとても有効。
トイレを失敗されるにも様々な理由があります。認知症高齢者が自尊心、存在感が守られ、自分らしく生活する為には、
できるだけオムツはしないのが望ましいと考えられます。まずは失敗を指摘しないことと、叱らないようにすることが大切です。
叱られても認知症高齢者は何故叱られたのかがわからず屈辱感だけが残り、不穏の原因・自己抑制につながります。
尿意があって間に合わない時には、ポータブルトイレを使用するかトイレに近い部屋を使用することが望ましいでしょう。
また、排尿時間を予測してトイレ誘導するのも効果的です。トイレの場所がわからないときには分かりやすく、派手に表示してみましょう。
自分の家に居るにもかかわらず、夕方になるときまって「もうそろそろ帰らしてもらいます。」と落ち着きをなくされ、しつこく訴えられるBさん。
その時あなたはどうしますか?
認知症の方に限らず人に会話を聞いてもらえないほど悲しいことはありませんよね。
どういったときでも怒ることは、良い影響を与えません。言葉だけでなく表情や態度でも伝わります。
Bさんにとって自分の家に帰らなくてはと一大事なのです。
訴えが強くなると、この答えに納得できない方もいらっしゃいます。
しかし「じゃあ、しょうがない」とあっさり諦められる時もあるので1つの良い方法でしょう。
一緒に外に出てみると「こっちやと思ったけど違うわ…。おかしいな。」と言って自分で納得され落ち着かれるときがあります。
外に出ることが気分転換になり、訴え自体を忘れられることもあります。
「ほな、よばれてから帰りましょか。」これも1つの方法です。うまく気分転換を図ることが介護する側、
される側にとってより良い関係を続ける方法です。
自分の居る場所が認識できないことは、認知症高齢者の場合よくありますね。この場合も頭ごなしに否定したりするのは良くありません。
言葉巧みにうまく納得される方法を見つけることができれば良いのですが、実際はなかなかうまくいかない場合も多いものです。
時間に余裕があれば無理に引き止めず、一緒に外出し、ころあいを見はからって帰ることが出来れば本人も納得され、
気分転換、運動になり良いのではないでしょうか。
どうしても無理に出て行こうとする方の場合は、気がついたらいなくなっているということもあるので、
ドアが開けばブザーが鳴るとか徘徊センサーをつけるのもいいでしょう。
主に夜間に落ち着きがなくなり、場合によっては興奮し、話が通じにくく、大きな声を出しているといった時、
どのような対応が望ましいでしょう。
このような状態になる背景として、ぼんやりとしたり、注意が向かないなど、外界を正確に据えることができないといった、悪夢にうなされているような状態と言えます。
全く遮断された状態では、一層不安が強まると考えられ、さらに興奮が高まることも考えられますから、孤独、暗黒の状態は避けるべきです。
急激な強い刺激は避けるべきです。刺激に驚いて、過度の反応や、場合によっては思わぬ暴力を引き起こす場合があります。
静かな部屋で、やや暗めに明かりをつけ、傍にいて(できれば手を握るなどして)
簡単な安心できる言葉をかけることが望ましいでしょう。このときに状況を説明するような、複雑な言葉かけをしても理解が得られないので「安心してください」「大丈夫ですよ」などの簡単な言葉かけがいいでしょう。
無視することはよくありませんが、その言動をゆっくり見守り、様子を窺うことが、必要な場合もあります。
この場合、本人にとって危険がないように保護することが大切です。
空腹で眠れず、大きな声を出されていることもあるようです。満腹にいなるまでとは言いませんが、
刺激の少ない温かいお茶や、少し何か食べてもらうことで、落ち着かれる場合もあります。
昼落ち着いている方が夜になると急に訳が分からないことを言ったり、落ち着きがなくなる状態を夜間せん妄と言います。
背景には意識レベルの変動があると考えられますが、身体的合併症により引き起こされる場合も多いので、まずは医師に相談しましょう。
せん妄状態を呈しその時には、大きな声や明かりを急につけたりすることは余計に混乱し興奮の原因となりますので、
低い小声でここが何処か、自分は誰かということをゆっくりわかり易く話し、理解してもらいましょう。
なにもせず、ぼんやりと過ごしている。時には居眠りしてしまうこともある。
このような場合には、どのような対応が望ましいでしょう。
寝てしまうと身体を使わないことや、刺激の少ない生活により、ますます、心身の機能の低下が進み
、このことで、さらに起き上がれなくなる悪循環が生じます。
また、生活リズムが崩れやすい状況を助長し、昼と夜が逆転してしまう可能性があります。
昼の間は、できるだけ横にならないことが能力維持の第一歩といえるでしょう。
無理強いはよくないのですが、認知症が進行しても、案外昔から馴染んでる手仕事や家事といったことは、
出来ることが多いものです。たとえば、簡単な布巾かけや、食器ふきなど、様子を見ながら進めてもらうことで、
意欲の向上や心身の安定につながります。
また、こういった活動を通して、良好なコミュニケーションを図ることが出来ます。
出来るだけ、持っている能力を発揮できる場を提供することが望ましいでしょう。
横になり寝てしまうよりは、座ってもらうだけでもましですが、声をかけて、せっかく目が覚めても、テレビを見ているだけでは、単調な刺激で、また居眠ってしまいます。
個人の興味を考えると関心が向く番組とは限らない為、対象者にとって良い刺激とはいえません。
個人の興味や関心、趣味などを考慮し適度な刺激を提供することが望ましいでしょう。
これも良い方法です。特に、複数人で話が出来る場合には、小グループになり昔話などに花を咲かせることで、お互いに活性化することが期待出来ます。会話の中で他者との心のつながりが生じるでしょう。
このような安心感は認知症高齢者の生活にとって重要な要素です。
活動性が低下することは、認知しょうが重度化してくるとしばしば認めます。
時にはうつ病や他の病気でも起こることがあり、その場合は医師と相談するのが良いでしょう。
重度の認知症で活動性が低下している方について、そのまま放置しておくことは精神的にも身体的にもよくありません。
よい刺激を少しずつでも、絶えず与えることが必要となります。重度の認知症の方であっても昔身についてたことや趣味、
話をすることなどは十分出来る場合も多く、また、少しの工夫で再び出来るようになるケースもあります。
あきらめず、少しずつでもアプローチすることが大切です。
『大事な物がなくなった、盗られた』とA子さん、さて、あなたはどうしますか?
きちんと説明しようと言う姿勢は大切ですが、本人にとっては、大事なものがなくなり、大変なことなのです。
説明で真実を理解していただくことは困難で、逆に混乱を招くこともあります。
本人にとっては、とても大切なものだから「なくなった、盗られた」と困っておられるのだと思います。
なのに「後で」と答えられると「どうして、何で今探してくれないの?」と腹立たしく思われるでしょう。
お茶やおやつを用いて、関心をそらして、忘れさせようと言う対応です。
認知症の方は記憶障害があり、少し前のことを忘れてしまうということがありますので、この様に気分を変えることで落ち着かれることがあります。
本人にとっては嘘ではありませんので、怒られることはとても不愉快だと思います。
「こんなに困っているのにどうして?」と余計に混乱されたり怒られたりするでしょう。
<このような症状を「盗害妄想」といいます。>
物盗られ妄想(盗害妄想)は、認知症高齢者に最も多い妄想で、認知症の初期〜中期によく出現します。
背景には記銘力の障害があると考えられています。頭ごなしに否定せず、
肯定もせず、本人が納得できるよう一緒に探すなどするようにしましょう。
また、見つかり易いよう隠せる場所を限定出来る工夫をするのも方法です。
上手く関心をそらすように対応することも重要です。興奮などが強く対応困難な場合には、専門医に相談をするのもいいと思います。
一般的には認知症の進行に伴い、消えていく事も多いです。
ご飯まだですかと何度も尋ねてくるBさん、さて、あなたはどうしますか?
何度でも同じ答えを繰り返し答えることは重要です。しかし、その答え方でもいい加減な態度であったり、
迷惑そうに答えては、せっかく何度も答えても、よい効果は半減してしまいます。
本人にとっては、とても不安で、心配だから同じことを何度も聞かれるのです。
無視されることで、不満が生じ、別の行動障害が現れるかもしれません。
何度も同じことを言っていることを忘れているのですから、とても不愉快な思いをされるでしょう。
何度も同じことを言われるとなかなか実践するのは難しく、家族であれば余計に腹が立つこともあるでしょう。
そこをどれだけ我慢して対応するかがポイントになります。
言語でのコミュニケーションが困難になればなる程、顔の表情や言葉の調子、雰囲気や態度が重要になるわけです。
本人が満足するような、言い訳や理由を探しながら対応するとか、本人の関心がそれていって、
こだわっていたことを忘れてもらえないかと考えることは必要です。
そのために本人をよく理解すること、本人の気持ちをわかろうとすることです。
"ご飯食べさえてもらってない""飯くれ!"と再三訴えられる。何度説明しても理解されない−よくあることです。
相手が納得されるよう、説明できればいいですが、押し問答は逆効果となる為、"ただ今つくっていますのでもう少々お待ち下さい"
などと何度か言っているうちに次の食事になる、なんてのはいかがでしょう?
それでも頻繁で対応が難しい時には分割食としましょう。
食べすぎは良くない為量には注意して下さい。臭いが感じられる方であればおやつも含め、食事の時準備から参加する等すると、
しばらく食事したことを覚えられている場合もあります。
また、目につく所には食べ物を置かない方が刺激が少なくていいかも知れません。
高齢の母の世話をしています。仕事に出かけないといけないし、最近の母の状態を見ていたら、 母を一人で家においておくわけにはいきません。どうすればよいのでしょう。
どのようなサービスを利用されたいのかを、市町の介護保険担当窓口、 又は包括支援センター等に相談に行かれる事、又サービスを利用するためには、サービスを受けられる状態かどうかの認定 (要介護認定・要支援認定)を受ける為の申請が必要です。申請すると、訪問調査や、介護認定審査会での審査を経て、 原則として30日以内に認定結果が通知されます。
ここで認定された、介護の手間のかかり具合(要介護度)によって利用できるサービスの量や内容が異なります。
又介護保険で利用できるサービスも[在宅サービス][施設サービス]によって異なってきます。
(※施設サービスにおいては、要支援の方は利用できません)
【困ったときの相談窓口】
■在宅介護支援センター
「在宅高齢者の介護を行っている家族介護者等に対し介護について総合的な相談に応じます。
介護保険のサービスや各種保険・福祉サービスを利用したほうが良い場合は、利用申請手続きのお手伝いもします。
いづれの市区町村にも必ずありますので、各高齢者福祉の担当課へご相談を。
■介護支え合い相談
社会福祉法人浴風会が行う、電話とファックスによる介護の悩み相談事業です。
高齢者の介護にあたる家族が抱える様々な悩みを、同様の介護経験を持つ相談員が受け止め、
不安や孤独感、疎外感の解消を図る事を目的としています。
フリーダイヤル | 0120-070-608(月〜金 10:00〜15:00 祝日を除く) |
ファックス | 0120-502-588(24時間受付) |
■老人性認知症疾患センター
認知症の始まりが疑われる極度のもの忘れや日常生活の支障等、認知症に関する様々な悩み事に適切にお答えできるように
専門医療相談を実施しています。
神戸市立西市民病院(神戸市) | 078-579-1946 |
兵庫医学大学(西宮市) | 0798-45-6050 |
市立加西病院(加西) | 0790-42-5511 |
公立豊岡病院(豊岡市) | 0796-22-1090 |
大塚病院(氷上市) | 0795-82-4874 |
県立淡路病院(洲本市) | 0799-24-5044 |